2018
綺麗な絵で読みごたえのあるBLが見たくなったとき、一ノ瀬ゆまの『gift』が超絶オススメです。
正式なタイトルを並べると、
『gift (上) 白い獣の、聞こえぬ声の、見えない温度の、』
『gift (中) 赤い桎梏(しっこく)の、約束の場所の、望んだ十字架の、』
『gift (下) 薄紅(うすべに)めく空の、潤(ほと)びる螺旋(らせん)の、光る岸辺の、』
いや、ながっ!
って、なりますよね(笑)
私も最初は「桎梏」(手かせ足かせの意)とか読めないし、ちょっとスルーしていました。
でもこれ、完結してみると、本当に内容をちゃんと表現しているんだな~としみじみ。
父親が運営するジムのトレーナー、御子柴宥(みこしばゆたか)・24歳と、酷い虐待を受けて育った19歳の美少年・白石勁(しらいしけい)の物語。
宥は、本当は選手として父の期待に応えたかったものの、トレーナー止まりであること、ゲイであることを隠しているという、コンプレックスの強い人物です。そんな彼が、路地裏で人を殴っている勁と出会い、やがてボクシング選手とトレーナーという関係に。勁は感情のない獣のような人間でしたが、宥との出会いで変わっていきます。
しかし複雑にこじれた精神は、成長が止まったまま。宥の望むような勝てるボクサーにならないと必要とされないと思い込み、2人の関係は思わぬ方向にねじれていきます。
私が思うこの作品の名作ポイントは、
・めちゃめちゃ絵がきれい。白石勁の凄みのある美しさに見入ってしまう
・ボクシングの知識をかなりしっかり取材していて、切ないストーリーにそれが生きている
・幼児虐待によって精神に致命的な傷を負った人の内面を、マンガで分かる形で誠実に描いている
作者は、かなり力を入れて作品を練って仕上げていることがよく伝わってきます。本当に、「人を傷つけるのは人であり、人を癒すのもまた人である」ということを、改めて痛感するお話です。
私が利用している電子書籍サイトでは、発売日当日で300以上のコメントがつき、★は平均4.5と非常に高評価。
冬の休暇の合間に、3巻一気に同時購入してみては?と自信をもってオススメできる作品です。