2018
そんな時は、思いっきり面白いBL漫画がいいですね。重い実先生の描く漫画は、「アホエロ」「ロマンスとジェラシー」など、ホントにアホというか笑いのセンスが一つ飛びぬけているといいますか、しれっと極度に笑えるセリフや場面を入れてくるのでクセになっています。
たとえば、ルームシェアしている大学生がエロビデオを一緒に見ているうちに自分たちも…とエスカレートしていく話『アホエロ』は、そのうちの一人が、「違和感がこっち見てる…」と、擬人化した「違和感」に見つめられ、これでいいいのか?!と葛藤します。
違和感が、ほんとにこっちを見ているんです。オマエなにやってんの…みたいに。そんな2人ですが「言っとくけど俺らは友だちだ」と自分を胡麻化しているところもまたオツです。
「ロマンスとジェラシー」(一進社)は、冒頭からやられます。出張先の飛行機で乗り合わせた社会人どうし。飛行機が乱気流でジェットコースター級に揺れる中、命の危機を感じながら怯える四ツ川は、大きな寝息を聞きます。
同じ列に揺れなどまったく気にせずグースカ寝ている男性、京田。抱えていた雑誌が揺れでバサバサと床に落ちますが、すべてゲイ雑誌…。ほどなくつき合い出す2人は、ラブラブ過ぎてバカップル丸出しなのに、エモーショナルなエピソードもありホロリとさせられます。
読んでいるとニコニコしてしまい、この世の憂さを忘れます。割と新人の方で、新刊が出るたび作家買いしていますが、うーん、正直この2作より面白いのがまだ出ませんね。
でも独特の闇が絡まった笑いのセンスにまだまだ期待しています!
2018
『俺は頼り方がわかりません(上・下巻)』(リブレ出版)って、タイトルからしてもう何かをこじらせた男子だなあって分かるので、そこに惹かれて買ってしまったんです。予想と期待を裏切らず、ぐるぐるの葛藤を軽快なタッチで熱く描く“腰乃節”がさく裂して楽しいのなんの。
学生時代から優秀で常に頼られる存在だった牧野は、就活に失敗。さらに彼女との初Hで失敗して初めて人生の挫折を味わいます。すっかり人としての自信を無くした牧野でしたが、2年間のニート生活の末、コネで入った就職先の田舎でゲイの青年・清宮に何かと助けられます。
ゲイではない牧野は、清宮の気持ちも知らず色々とデリカシーの無い言動をしてしまいますが、それが却って牧野の頼りないヘタレ野郎ぶりを浮き立たせることになり、コメディタッチが加速。一種のリズム感があって、読みだすとやめられない面白さです。しかも頼られる存在だったなんて面影は全然ありません。
しかし私がより感心してしまうのは、牧野の悩みや葛藤を何かに具現化して描いているところです。夢の中ですが、崩れる道や、どこへ飛んでいくかいつ割れるかも分からない風船を持って飛んでいくところ。究極は、清宮の気持ちも知らずに接していた自分に思い至り、本当の迷路に迷い込んでいる描写でした。
それこそ、人生迷路にはまっている人、相手の気持ちが分からず恋の迷路に入り込んでいる人に読んでいただきたいお話ですよ。
2018
依田佐江美さんの昇と勇気シリーズ、『真夜中を駆けぬける』(シャレードコミックス)は、息の長いファンが多い作品だと思います。1巻が同タイトルで、2巻は『千の花』、今回読んだのは3巻目の『美しく燃える森』です。
雑誌編集者の土屋昇と画家の日比谷勇気は、学生のころ一度破局した過去がある、再燃系恋愛の2人です。しかし、勇気が女性にもてて浮気癖があるため、昔のような嫉妬に苦しみたくない昇は少し距離を置いて、つかず離れずの関係に。しかし3巻ではどっぷり愛し合っていますけどね(笑)
そういう枠組みよりももっと、良いなと私が思うこちらの名作ポイントは、
1.画家の世界観、編集者の世界観をしっかりと深堀りして丁寧に描いているところ
2.何も考えてなさそうな勇気が意外と芯をついた名言や美しいセリフを吐くところ
3.2人のやり取りに細かい笑いがあって、ケンカしてても仲が良さそうなコメディ的な場面が楽しい
ほかにも色々ありますが…絵も繊細で綺麗で好きです。
今回の勇気の私的名ゼリフはこちら
「あなたは傷ついている。なのに傷ついている自分を無視して周りからどう思われているかばかり気にしているんだ。まずちゃんと自分を守ってあげなさいよ」
コレ、昇に言ったわけじゃないんですけど、過去のトラウマに自分で気づかないふりをして、メンタルを病んでいた昇に響いた言葉です。一緒に聞いていた昇にドンピシャだったんですね。自分の気持ちをごまかしていると、身体に不調がでると気づかされます。
それと今回は、勇気がスランプの頃、古美術評論家の塩野女史と美術論を交わす場面が興味深かったですね。BL関係ないように感じるのですが、登場人物が大事にしている世界観をここまでじっくりていねいに描いているBLはなかなか見ません。それが、ちゃんとラブと絡んで機能していることが凄く素敵だと思います。
2018
遠距離を不安がる美三郎に、ゲイバーのママ、ポン子さんが言う言葉が印象的でした。
ほかにも、愛すべきキャラクターたち、美少年のハルくんと元教師で社会人の北原さんの回、火野さんとポンちゃんの片思いがついに実る?回など、もう説明不要の楽しさがありましたね~。
そして、なんといっても「Welcome back home」では清水さんとみいくんのお母さんの最後の会話が聞けたことが良かったです。
みいくんのお母さんは、悪気はないけどゲイの息子に「いやだあー」と言って泣くような、ちょっとダメな大人なのですが、もし相手が恵ちゃんだったら?と清水さんに言われたときの答えがとてもよかった。
雲田はるこさんの漫画には、こういうダメな人にも等しく「憎めない」エッセンスを加えてくれるんですよね。そういうところがとても好き。今回も、お母さんはこういう気持ちだったんだなあとわかり少しほっとして、やっぱり2人の乗る車が雪道を遠ざかる場面にぐっときました。
2018
山田の実家はカフェというより昔ながらの喫茶店で、例えば紙おしぼりよりホカホカの布おしぼりが出てきそうな雰囲気です。